今日の話題
肥満の環境要因としての腸内細菌叢
肥満を予防・改善できるプロバイオティクスはあるか?
Vol.49 No.10 Page. 664 - 665 (published date : 2011年10月1日)
概要原稿
肥満は,動物個体のエネルギー収支の不均衡によって体脂肪が過剰に蓄積した状態である.肥満の発症には遺伝的背景と環境要因の双方が関わるが,近年,腸内細菌叢がその環境要因のひとつとして注目を集めている.その根拠としては,正常体重個体と肥満個体とでは腸内細菌叢の構成が異なること,腸内細菌叢をもつ通常のマウスに比べて腸内細菌叢をもたない無菌マウスでは肥満に対して抵抗性を示すこと,肥満ドナーマウスからの腸内細菌の移植によりレシピエントマウスの体脂肪蓄積が促進されることなどがあげられている(1).腸内細菌叢が宿主の体脂肪蓄積に影響を及ぼすメカニズムとして考えられているのは,腸管における食物由来の難消化性炭水化物からのエネルギー獲得,消化管ホルモン産生・分泌を介した食欲調節,宿主の脂質・エネルギー代謝への影響などである.腸内細菌叢が肥満の発症や進展の環境要因であるということは,言い換えれば,腸内細菌叢が肥満の予防・治療の標的となりうるということである.たとえば,ある種の細菌株を摂取することにより,肥満を予防・治療すること,すなわち抗肥満プロバイオティクスが可能かもしれない.
リファレンス
- 1) 園山 慶:腸内細菌学雑誌,24, 193 (2010).
- 2) U. Santoso, K. Tanaka & S. Ohtani : Br. J. Nutr., 74, 523 (1995).
- 3) H. Homma & T. Shinohara : Anim. Sci. J., 75, 37 (2004).
- 4) 長田裕子ら:日本食品化学工学会誌,55, 625 (2008).
- 5) Y. Kadooka et al. : Eur. J. Clin. Nutr., 64, 636 (2010).
- 6) H-Y. Lee et al. : Biochim. Biophys. Acta, 1761, 736 (2006).
- 7) X. Ma et al. : J. Hepatol., 49, 821 (2008).
- 8) M. Tanida et al. : Obes. Res. Clin. Pract., 2, 159 (2008).
- 9) E. M. Hamad et al. : Br. J. Nutr., 101, 716 (2009).
- 10) L. Aronsson et al. : PLoS One, 5, e13087 (2010).
- 11) S. Kondo et al. : Biosci. Biotechnol. Biochem., 74, 1656 (2010).
- 12) N. Takemura et al. : Exp. Biol. Med., 235, 849 (2010).
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