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最先端の方法で病原体を見つける
メタゲノム解析の威力とウイルス学への期待

Vol.49 No.10 Page. 667 - 669 (published date : 2011年10月1日)
濱田 信之1
  1. 久留米大学医学部

概要原稿

2008年,阪大グループにより,原因不明の腸炎患者の病原体がついに突き止められたと報告があった(1).これは,数年前に出現した次世代シーケンサーによるメタゲノム解析の威力を如実に示した例であった.図1に一般的な病原体検索におけるメタゲノム解析のフローチャートと各段階の注意点を示す(2).この報告で面白いのは,得られた膨大な塩基配列から「意味のある」病原体を抽出するために,差し引くためのバックグラウンドとして,回復後(3ヵ月後)の糞便DNA配列を使ったことである(図1ではステップ7の作業段階).その結果,カンピロバクター(Campylobacter)属菌が抽出された.さらに重要なポイントは,この情報をもとに,発症時の糞便の細菌検査によりカンピロバクター・ジェジュニ (Campylobacter jejuni) を分離同定したことである.つまりこの報告の意義は,どの菌株の検査を目指すかという選択をメタゲノム解析情報により行なったことである.このスキームは,将来の臨床現場での病原体検索における次世代シーケンサーの立ち位置を示すものと思われる.

リファレンス

  1. 1) S. Nakamura et al. : Emerg. Infect. Dis., 14, 1784 (2008).
  2. 2) M. Kuroda et al. : PLoS One, 5, e10256 (2010).
  3. 3) R. A. Fouchier et al. : Nature, 423, 240 (2003).
  4. 4) H. Honda et al. : J. Am. Geriatr. Soc., 54, 177 (2006).
  5. 5) S. R. Finkbeiner et al. : PLoS Pathog, 4, e1000011 (2008).
  6. 6) P. L. Quan et al. : Emerg. Infect. Dis., 16, 918 (2010).
  7. 7) I. A. Hamza, L. Jurzik, K. Uberla, & M. Wilhelm : Water Res., 45, 1358 (2011).
  8. 8) E. F. Donaldson et al. : J. Virol., 84, 13004 (2010).


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