今日の話題
ワムシ個体数変動の分子機構
高い環境適応力の謎を探る
Vol.49 No.11 Page. 736 - 738 (published date : 2011年11月1日)
尾崎 依1,
大森 文人2,
金子 元2
- 明治大学農学部
- 東京大学大学院農学生命科学研究科
概要原稿
自然界で生物の個体数は一定ではない.一見安定した環境下でも増加と減少を繰り返し,その変動幅は時に数百倍にも及ぶ.たとえば水圏ではイワシ類の大変動が有名で,紀元前から約60年の周期で変動していたことが太平洋の海底に堆積した骨の解析により明らかになっている.こうした個体数の変動は,気候,餌,捕食者の影響といった複数の要因が作用した結果,ひき起こされると考えられている.この複雑な現象を理解するためには,人為的に調節した環境下で,個々の要因の影響を観察できるモデル生物を用いたアプローチが有効である.ここでは,そのようなモデルとして最もよく研究されている種の一つ,シオミズツボワムシの個体数変動に関する話題を,遺伝子レベルでの新しい知見も交えて紹介したい.
リファレンス
- 1) T. Yoshinaga, A. Hagiwara & K. Tsukamoto : Hydrobiologia, 412, 103 (1999).
- 2) F. Ohmori, G. Kaneko, T. Saito & S. Watabe : Hydrobiologia, 667, 101 (2011).
- 3) Y. Ozaki, G. Kaneko, Y. Yanagawa & S. Watabe : Hydrobiologia, 649, 267 (2010).
- 4) G. Kaneko, T. Yoshinaga, Y. Yanagawa, Y. Ozaki & S. Watabe : Funct. Ecol., 25, 209 (2011).
- 5) D. Mark Welch & M. Meselson : Science, 19, 1211 (2000).
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