巻頭言
時には立ち止まって
Vol.49 No.12 Page. 805 - 805 (published date : 2011年12月1日)
冒頭文
なんとも住みにくい世の中になった,と感じるのは筆者だけだろうか.この100年,人類は科学技術の発展こそが人類に幸福をもたらすと信じて邁進してきたが,発展すればするほど不安感が増幅される.何か間違えているのではないか? 何か見落としてきてしまったのではないか? 3.11に代表される福島第一原発の放射能汚染はその典型であろう.まさに取り返しのつかない事態を招いてしまった.不安の原因は,その技術が未完成のまま実用化されたことにより,一度事故が発生したときには修復不能であった点にある.このようなケースは我々の研究とも無縁ではない.遺伝子改良作物の実用化,抗生物質の多用による多剤耐性菌の出現,臓器移植に伴う生命倫理の混迷,人工化学物質の繁用,化石燃料多用による地球温暖化をはじめとする全球的環境問題など,科学技術が関与するすべての分野に及ぶ.まだ見落としや制御の利かない欠点があるにもかかわらず,人間の英知を傾けた開発ゆえにと,科学技術を妄信してはいなかったか.
リファレンス
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