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ビフィズス菌の産生する酢酸がO157感染死予防に重要である
マルチオーミクス手法の有用性
Vol.49 No.12 Page. 814 - 816 (published date : 2011年12月1日)
大野 博司1,
福田 真嗣1
- 理化学研究所免疫・アレルギー科学総合研究センター
概要原稿
ヒトをはじめとする動物の腸内には膨大な数の細菌群が定着しており,これを腸内フローラという.ヒトの腸内フローラには500~1,000種類の異なる菌種が含まれると考えられており,その総数は100兆個以上と,約60兆個とされるわれわれの体細胞数を凌駕し,腸内フローラがコードする全遺伝子数もヒト全遺伝子の100倍以上と想定されている(1).腸内フローラは宿主が摂取する食物成分から栄養を得て増殖するが,その際にビタミンやアミノ酸などを産生したり宿主が消化できない難消化性食物繊維を分解することで宿主の栄養補給を助けたり,宿主の免疫系を賦活したり,さらには食物などとともに摂取された病原微生物と競合することにより感染防御に働くなど,宿主に有益な作用をもたらすいわゆる「善玉菌」が存在する一方,ニトロソアミンなどの発がん物質を産生したり,また日和見感染の原因となったりといった有害な側面をもつ「悪玉菌」も存在することがわかってきた(2).
リファレンス
- 1) R. E. Ley, D. A. Peterson & J. I. Gordon : Cell, 124, 837 (2006).
- 2) 光岡知足:“腸内細菌の話”,岩波書店,1978.
- 3) S. Fukuda et al. : Nature, 469, 543 (2011).
- 4) 今岡明美:Functional Food, 4, 400 (2011).
- 5) 谷口 暢,内田隆一,本田武司:治療,91, 1231 (2009).
- 6) K. Yoshimura, T. Matsui & K. Itoh : Antonie Van Leeuwenhoek, 97, 107, (2010).
- 7) S. Tedelind, F. Westberg, M. Kjerrulf & A. Vidal : World J. Gastroenterol., 13, 2826 (2007).
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