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mRNA輸送体の多様化と生物学的意義
高等真核生物では機能の異なるものに多様化.生物進化の原動力か?
Vol.50 No.1 Page. 9 - 11 (published date : 2012年1月1日)
山崎 智弘1,
増田 誠司2
- ハーバード大学医学系研究院
- 京都大学大学院生命科学研究科
概要原稿
mRNAは,DNAのもつ遺伝情報の一過性伝達手段である(1).これまでのmRNAのイメージは,DNAから転写された後,プロセシングを受け,細胞質へと輸送されてタンパク質をつくるために使用される伝令役であろう.しかし,この10年の研究から,mRNAプロセシング過程や細胞質への輸送過程(核外輸送という)に関わる因子の機能解析が急速に進んだ.同時に,機能不備のタンパク質をつくらないためのmRNA品質管理機構やmiRNAによる翻訳制御の解明など,mRNAの成熟や安定性の制御に関わるタンパク質因子群の機能解析が進行してきた(2).その結果,mRNAの動的制御は従来考えられてきたよりもはるかに厳密かつ精巧に行なわれていることがわかってきた.さらに,ヒト全ゲノム配列の決定やバイオインフォマティックスの整備により,ヒト遺伝病の約20%はスプライシング異常などのmRNAプロセシング段階での問題であることも明らかになった.これらのことから,mRNAは細胞にとってとても大事な伝令役であり,様々なタンパク質を関与させて大切に扱われていることがわかる.では順を追って核でmRNAができていく様子を見てみよう
リファレンス
- 1) G. Orphanides & D. Reinberg:Cell, 108, 439 (2002).
- 2) A. Kohler & E. Hurt:Nature Rev. Mol. Cell Biol., 8, 761(2007).
- 3) R. Reed & E. Hurt:Cell, 108, 523 (2002).
- 4) S. Komili & P. A. Silver:Nature Rev. Genet., 9, 38 (2008).
- 5) M. B. Fasken & A. H. Corbett:RNA Biol., 6, 237 (2009).
- 6) T. Yamazaki et al.:Mol. Biol. Cell, 21, 2953 (2010).
- 7) F. Kapadia, A. Pryor, T. H. Chang & L. F. Johnson:Gene, 384, 37 (2006).
- 8) A. Pryor, L. Tung, Z. Yang, F. Kapadia, T. H. Chang & L. F. Johnson:Nucleic Acids Res., 32, 1857 (2004).
- 9) S. Masuda, R. Das, H. Cheng, E. Hurt, N. Dorman & R. Reed:Genes Dev., 19, 1512(2005).
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