解説

ゲノム合成の実践とゲノム活用の将来

Vol.50 No.1 Page. 30 - 35 (published date : 2012年1月1日)
板谷 光泰1
  1. 慶應義塾大学先端生命科学研究所

概要原稿

今や,どのような生物種のゲノムでも塩基配列決定が迅速にできる時代になった.対照的なのがゲノムを合成する技術で,扱うゲノムが高分子巨大DNAであるために,クローニングはおろか,ゲノムを日常的に操作する共通の手法すらなかった.最近2つのグループが,ゲノムは丸ごとクローニングして操作できることを実証した.バクテリアゲノム工学の概念を根本から変えるこの成果は,しかしながら巨大DNAであるゲノムを扱う困難さとコスト高のせいで,汎用技術になるにはまだ時間がかかりそうである.どんなゲノムでも合成できる汎用性の高い系は確立できるのか,またそのような系で得られる合成ゲノムが,ライフサイエンス分野でどのような応用が可能か,その現状を述べる.

リファレンス

  1. 1) M. Itaya, K. Tsuge, M. Koizumi & K. Fujita : Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 102, 15971 (2005).
  2. 2) D. Gibson et al. : Science, 319, 1215 (2008).
  3. 3) D. Gibson et al. : Science, 329, 52 (2010).
  4. 4) M. Itaya : Nature Biotechnol., 28, 687 (2010).
  5. 5) 板谷光泰,柘植謙爾,小泉真貴,藤田京子:蛋白質 核酸 酵素,51, 61 (2006).
  6. 6) M. Itaya & T. Tanaka : Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94, 5378 (1997).
  7. 7) 板谷光泰:岩波科学,80, 734 (2010).
  8. 8) 板谷光泰,柘植謙爾:化学と生物,45, 226 (2007).
  9. 9) 板谷光泰:実験医学,29, 140 (2011).
  10. 10) S. Kaneko, M. Akioka & M. Itaya : J. Mol. Biol., 349, 1036 (2005).


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