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トランスシナプス標識法による神経回路の可視化と機能解析
高解像度の神経接続マップがひらく新しい脳科学の世界

Vol.50 No.3 Page. 154 - 156 (published date : 2012年3月1日)
宮道 和成1
  1. 米国スタンフォード大学生物学部

概要原稿

脳の機能は,相互に複雑にからみあったニューロンのネットワークが生み出す活動電位のパターンに基礎づけられている.ニューロンのつながり方を正確に記述することは,そこで行なわれる情報処理の原理を理解する第一歩である.およそ120年前,近代脳科学の父ラモン・イ・カハールはゴルジ染色法により神経回路の詳細な構造を観察・記載する手法を開発した.以来,局所的な神経回路はそれぞれの細胞の樹状突起や軸索を丹念に追跡することで予測され,脳切片の電気生理学によって検証されてきた.近年,光で活性化されるイオンチャネルや活動電位/Ca2+シグナルを検出するタンパク質などが相次いで開発・改良され,局所的な神経回路を記述する方法は飛躍的に発展している(1, 2).また,電子顕微鏡による超高解像度の3次元像を自動的に作製する試みも進展している.これに対し,長距離の軸索投射による神経接続を正確に記述するのはきわめて困難である.トレーサーの局所注入などの古典的な手法は,低解像度で定性的な軸索投射を記述することしかできない.

リファレンス

  1. 1) L. Luo, E. M. Callaway & K. Svoboda : Neuron, 57, 634 (2008).
  2. 2) O. Yizhar, L. E. Fenno, T. J. Davidson, M. Mogri & K. Deisseroth : Neuron, 71, 9 (2011).
  3. 3) G. Ugolini : J. Neurosci. Methods, 194, 2 (2010).
  4. 4) I. R. Wickersham, D. C. Lyon, R. J. Barnard, T. Mori, S. Finke, K. K. Conzelmann, J. A. Young & E. M. Callaway : Neuron, 53, 639 (2007).
  5. 5) K. Miyamichi et al. : Nature, 472, 191 (2011).
  6. 6) E. A. Rancz, K. M. Franks, M. K. Schwarz, B. Pichler, A. T. Schaefer & T. W. Margrie : Nature Neurosci., 14, 527 (2011).
  7. 7) F. Osakada, T. Mori, A. H. Cetin, J. H. Marshel, B. Virgen & E. M. Callaway : Neuron, 71, 617 (2011).


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