今日の話題
地力窒素の分子実体は何か
土壌には多様な分子量の有機態窒素が存在する
Vol.50 No.4 Page. 239 - 241 (published date : 2012年4月1日)
森泉 美穂子1,
松永 俊朗1
- 農業・食品産業技術総合研究機構中央農業総合研究センター
概要原稿
作物は土壌から主として無機態の窒素を吸収する.その窒素は,化学肥料に含まれている無機態窒素だけではなく,土壌に含まれている有機態窒素から徐々に分解生成する無機態窒素にも由来する.この土壌から生成し作物に供給される窒素を「地力窒素」あるいは「可給態窒素」と言う.土壌中には,生物活動や化学反応から生み出される様々な窒素含有有機物が存在する.それらの有機物が主に生物的に分解されて,生成した無機態の窒素が作物に供給される.地力窒素の発現量を知ることは,作物の生育予測や施肥設計に大変重要であることから,その推定手法が研究されてきた.現在,作物の生育量と生物学的あるいは化学的分析の結果得られた測定値との相関から地力窒素量が推定されている.代表的な方法としては,温度・水分条件を一定にして土壌を培養して発現する無機態窒素量を測定する「培養窒素法」と,地力窒素の給源となる有機物を選択的に抽出することを目的とした「熱水抽出法」,「リン酸緩衝液抽出法」などが挙げられる.しかし,「どのような物質が地力窒素の給源なのか?」という問いに対しては,未だに明確な答えが得られていない.
リファレンス
- 1) 森泉美穂子,松永俊朗:日本土壌肥料学雑誌,80, 304 (2009).
- 2) X. C. Wang & C. Lee : Mar. Chem., 44, 1 (1993).
- 3) M. Kleber, P. Sollins & R. Sutton : Biogeochemistry, 85, 9 (2007).
- 4) H. Knicker & P. Hatcher : Naturwissenschaften, 84, 231 (1997).
- 5) A. Piccolo : Adv. Agron., 75, 57 (2002).
- 6) S. Matsumoto, N. Ae & M. Yamagata : Soil Sci. Plant Nutr., 46, 139 (2000).
- 7) 上薗一郎, 加藤直人, 森泉美穂子:日本土壌肥料学雑誌,81, 39 (2010).
- 8) M. Moriizumi & T. Matsunaga : Soil Sci. Plant Nutr., 57, 185 (2011).
- 9) S. A. Huber, A. Balz, M. Abert & W. Pronk : Water Res., 45, 879 (2011).
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