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植物細胞の意外なコミュニケーション術
マイクロRNAを介した組織形成シグナリング
Vol.50 No.5 Page. 314 - 316 (published date : 2012年5月1日)
中島 敬二1
- 奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科
概要原稿
マイクロRNA (miRNA) は,ゲノムからの転写とプロセシングを経て生成される約21 塩基の1本鎖RNAであり, 相補的な配列をもつメッセンジャーRNA(mRNA) の特異的分解や翻訳阻害に働く.この経路によりmRNA の一部,あるいは大部分がタンパク質へ翻訳されずに不活性化される.miRNAに制御される遺伝子の数は,ゲノム全体から見ると決して多くはない.しかし,miRNA で制御される遺伝子の中に重要な調節因子をコードするものが多数含まれていることや,進化的な保存性を考えても,この経路を単なる転写調節の補完物と見るのではなく,細胞質に局在する小さなRNAが遺伝子産物の量を決める,ということに積極的な意味を見いだす必要があるだろう.ここでは,細胞間を動くmiRNA が,植物の根の組織形成に重要な役割を果たしている例を紹介する.
リファレンス
- 1) K. Nakajima et al. : Nature, 413, 307 (2001).
- 2) H. Cui et al. : Science, 316, 421 (2007).
- 3) A. Carlsbecker et al. : Nature, 465, 316 (2010).
- 4) S. Miyashima et al. : Development, 138, 2303 (2011).
- 5) A. Vatén et al. : Dev. Cell, 21, 1144 (2011).
- 6) K. Koizumi et al. : Curr. Biol., 21, 1559 (2011).
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