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酵母の浸透圧ストレス応答
アクア(グリセロ)ポリンの生理機能と制御機構
Vol.50 No.6 Page. 398 - 400 (published date : 2012年6月1日)
概要原稿
浸透圧ストレス応答は細胞が外界の環境変化に適応するための必須な機構であり,出芽酵母 Saccharomyces cerevisiae において最も研究が進んでいる(1).酵母は高浸透圧ストレスに曝されると急激な脱水により一時的に収縮し,適合溶質としてグリセロールを蓄積すると再び水を吸収し元のサイズに戻る(図1).この過程で生じる膨圧の変化を細胞膜上の浸透圧センサーが感知し,その下流にある Hog1 MAPK (mitogen-activated protein kinase) 経路がグリセロール合成遺伝子の誘導など様々な応答を制御している.さらにHog1は,ここで取り上げるアクアポリンとアクアグリセロポリンの制御を介して細胞内の水とグリセロール量を調節していると考えられている.アクアポリンとは生体膜を介して水の選択的透過を担う水チャンネルであり,グリセロールなどの小物質の輸送にはアクアグリセロポリンが関与している(2).この2つは系統樹解析でも明確に区別され,酵母ではアクアポリンが2つ (Aqy1, Aqy2) とアクアグリセロポリンが2つ (Fps1, Yfl054c),ヒトでは合計10種類以上存在する(図2).ここでは,筆者が所属するスウェーデン・ヨーテボリ大学のHohmannグループが進めてきた酵母のアクア(グリセロ)ポリンの生理機能と制御機構について紹介する.
リファレンス
- 1) S. Hohmann : Microbiol. Mol. Biol. Rev., 66, 300 (2002).
- 2) N. Pettersson et al. : Biol. Cell, 97, 487 (2005).
- 3) V. Laizé et al. : Yeast, 16, 897 (2000).
- 4) F. Sidoux-Walter et al. : Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 101, 17422 (2004).
- 5) K. Furukawa et al. : Mol. Microbiol., 74, 1272 (2009).
- 6) M. J. Tamás et al. : J. Biol. Chem., 278, 6337 (2003).
- 7) M. Thorsen et al. : Mol. Biol. Cell, 17, 4400 (2006).
- 8) G. Fischer et al. : PLoS Biol., 7, e1000130 (2009).
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