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海洋天然物のケミカルバイオロジー
ブリオスタチンとイグジグオリドへの合成化学的アプローチ
Vol.50 No.6 Page. 404 - 405 (published date : 2012年6月1日)
概要原稿
人類は長い歴史の中で,医薬資源として植物や微生物由来の薬効成分を探索・活用し,健康の維持・増進をはかってきた.一方,海洋生物が生産する二次代謝産物(天然物)の探索の歴史は比較的浅く,20世紀後半から次第に活発に行なわれるようになった.その結果,陸上生物の二次代謝産物には見られない,独特な分子構造と興味深い生物活性を有する化合物が近年次々と発見され,天然物創薬を大いに活性化したほか,生物現象の分子レベルでの理解と制御におけるツールとして期待されている.しかし,海洋天然物は多くの場合において極微量成分である.生産生物の乱獲は海洋生態系の破壊につながり,培養による化合物供給は困難を極める場合が多い.このため,化学合成による実践的な化合物供給法の開発が必要である.さらに,化学合成によれば天然物の分子構造の部分改変や単純化も可能であり,それに伴う活性増強・分離などの生体機能のチューニングを通じて,新たな生体機能分子を創出することができる.すなわち,極微量天然物の実践的供給と生物活性評価や,天然物を基盤とする新規化合物の探索において,合成化学者の果たす役割はきわめて大きいと言える.
リファレンス
- 1) G. R. Pettit et al. : J. Am. Chem. Soc., 104, 6846 (1982).
- 2) R. Mutter & M. Wills : Bioorg. Med. Chem., 8, 1841 (2000).
- 3) G. R. Pettit et al. : Tetrahedron, 47, 3601 (1991).
- 4) K. J. Hale & S. Manaviazar : Chem. Asian J., 5, 704 (2010).
- 5) P. A. Wender et al. : Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85, 7197 (1988).
- 6) P. A. Wender et al. : Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95, 6625 (1998).
- 7) P. A. Wender et al. : Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 108, 6721 (2011).
- 8) S. Ohta et al. : Tetrahedron Lett., 47, 1957 (2006).
- 9) H. Fuwa et al. : Chem. Eur. J., 17, 2678 (2011).
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