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ミツバチの女王蜂分化を誘導する因子ロイヤラクチンの発見
ミツバチのカースト分化誘導機構の解明
Vol.50 No.7 Page. 476 - 478 (published date : 2012年7月1日)
概要原稿
ミツバチは女王蜂と働き蜂からなる階級社会(カースト)を形成しており,同じ遺伝子型をもつ雌の幼虫のなかでも王台という女王蜂を育てるための部屋で成育した個体は,働き蜂の分泌するローヤルゼリー (RJ) を摂取して女王蜂へと分化する.一方,通常の巣房で成育した個体は,ハチミツや花粉などを摂取して働き蜂へと分化する.このように,ミツバチの発生および分化においては,RJによるエピジェネティックな調節が行われている.女王蜂は働き蜂に比べ,体サイズが1.5倍,寿命が20倍であり,1日に2,000個の卵を産むという特徴をもっている.筆者が研究を始めた当時,この女王蜂への分化のしくみについてはまったく明らかになっていなかったが,それまでに,RJに含まれるカースト分化に関与する因子の探索は数多く行われてきた.1970年代くらいにその研究がさかんとなりカースト分化誘導因子の探索が広く行われたが同定には至らなかった(1).そんな中,同因子の候補にあがったのはRJに含まれるグルコースとフルクトースであった.一般の生物学的な概念ではそれら糖質が個体の分化を制御することは考えにくいが,糖質とカースト分化との関係についての報告が数多くなされた
リファレンス
- 1) H. Rembold, B. Lackner & I. Geistbeck : J. Insect Physiol., 20, 307 (1974).
- 2) J. Beetsma : Bee World., 60, 24 (1979).
- 3) G. Bloch, D. E. Wheeler & G. E. Robinson : “Hormones, Brain and Behavior 3”, Academic Press, 2002, p. 195.
- 4) M. Kamakura et al. : J. Nutr. Sci. Vitaminol., 47, 394 (2001).
- 5) M. Kamakura : Nature, 473, 478 (2011).
- 6) J. Colombani et al. : Science, 310, 667 (2005).
- 7) V. Aguilar et al. : Cell Metab., 5, 476 (2007).
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