追悼
松井正直先生を悼む
Vol.50 No.8 Page. 616 - 617 (published date : 2012年8月1日)
概要原稿
本会名誉会員で日本学士院会員の東京大学名誉教授 松井正直先生は,2012年3月12日癌性胸膜炎にて94歳で逝去された.先生は1917年12月9日長野県上田市にお生まれになり,上田中学,静岡高校理科甲類を経て,1941年3月に東京帝国大学農学部農芸化学科を卒業された.結核に悩まされた青春時代から先生は化学を志し,Organic Syntheses Collective Volume 2の私訳を完成されていたので,卒業研究では有機化学を学ぼうと鈴木梅太郎の女婿 鈴木文助教授の生物化学研究室へ進まれた.ところが微生物を用いるテーマを与えられてびっくりしたそうである.卒業後直ちに台湾製糖株式会社に入社し,同社より理化学研究所に派遣された.理研では鈴木梅太郎の高弟 山本 亮先生(1890-1983年;台北帝大,東京農大教授)に師事して,白花除虫菊の殺虫成分であるピレスロイドの研究に従事された.1942年10月に理研栄養薬品株式会社に転職し,1945年7月まで理研で研究を続けられた.山本 亮先生が住友化学株式会社の農薬研究に関与されるに伴って,先生は1945年8月より住友化学株式会社に技師として転職された.同年9月より1949年8月までは,先生は京都大学理学部化学科有機化学研究室(野津竜三郎教授)に研究嘱託として住友から派遣され,1950年に理学博士(京都大学)の学位を取得された.以上の青春期を先生は「僕は転職の名人だったよ」と述懐しておられた.転職を重ねつつ有機化学研究の志を貫かれたのである.
リファレンス
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