今日の話題

出芽酵母における選択的オートファジーの新規輸送基質の発見
一粒で二度おいしい酵素たちの話

Vol.50 No.10 Page. 708 - 709 (published date : 2012年10月1日)
柚賀 正樹1, 新谷 尚弘2
  1. 合同酒精株式会社酵素医薬品研究所
  2. 東北大学大学院農学研究科

概要原稿

生物はさまざまな環境ストレスと対峙しながら生活を営んでいる.そのなかでも栄養飢餓はすべての生物にとって最も原始的なストレスであると言える.外界の栄養が枯渇すると,細胞は遺伝子発現を変化させ困難な時期を乗り切ろうとするが,新たなタンパク質合成に必要な栄養源が外部から得られないという矛盾が生じる.しかし,真核生物は自らの細胞成分を分解し,再利用するオートファジーと呼ばれる機能を備えており,栄養飢餓下で必要なエネルギー生産やタンパク質合成を維持している.たとえば,出芽酵母のオートファジー不能株は胞子形成(栄養飢餓が引き金となって起こる)できず,オートファジー欠損マウスは母体からの栄養が絶たれる出生直後に早期に死に至ることが知られる.さらに,近年オートファジーが細胞毒性を示す基質(異常タンパク質,感染した細菌,傷害をもつオルガネラなど)や過剰なオルガネラの選択的な除去などの多様な生命現象にかかわっていることが明らかになりつつある(1).

リファレンス

  1. 1) N. Mizushima & M. Komatsu : Cell, 147, 728 (2011).
  2. 2) 新谷尚弘:蛋白質核酸酵素,51, 1480 (2006).
  3. 3) M. Yuga, K. Gomi, D. J. Klionsky & T. Shintani : J. Biol. Chem., 286, 13704 (2011).
  4. 4) T. Shintani & D. J. Klionsky : J. Biol. Chem., 279, 29889 (2004).
  5. 5) T. Shintani, W.-P. Huang, P. E. Stromhaug & D. J. Klionsky : Dev. Cell, 3, 825 (2002).
  6. 6) H. Hirayama, J. Seino, T. Kitajima, Y. Jigami & T. Suzuki : J. Biol. Chem., 285, 12390 (2010).


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