セミナー室 / 放射性降下物の農畜水産物等への影響

低濃度汚染土壌における野菜への放射性核種の移行

Vol.50 No.12 Page. 904 - 906 (published date : 2012年12月1日)
大下 誠一1, 安永 円理子1, 高田 大輔1, 田野井 慶太朗1, 川越 義則2
  1. 東京大学大学院農学生命科学研究科
  2. 日本大学生物資源科学部

概要原稿

2011年3月11日に福島県で発生した原発事故により,放射性核種が各地に飛散した.このため,汚染の程度が低いと考えられる地域でも,放射性降下物による農産物の直接汚染の懸念が広がった.そこで,事故の約2カ月後から,東京都西東京市で栽培途上にある野菜の放射性セシウム(134Csおよび137Cs)による汚染の検討を始めた(1).しかし,時間が経過すれば経根吸収による放射性核種の移行(間接汚染)も問題になる.このため,人為的に高い濃度の放射性核種を培地に付与した移行実験がなされており,稲(2~4),ブドウ(5),キノコ(6) などに加えて,畑作物に関する報告もある(7~9).一方で,食材に及ぼす環境放射能の影響を評価した報告(10) はあるものの,移行実験では,たとえば490 kBq/pot(8) という高濃度の 137Csや 134Csが用いられていることが多い(11).ここでは,低濃度汚染畑地土壌で栽培されたジャガイモへの放射性セシウムの影響について,概要を述べる(12).

リファレンス

  1. 1) 大下誠一他:RADIOISOTOPES, 60, 329 (2011).
  2. 2) 天正 清他:日本土壌肥料学雑誌,30, 253 (1959).
  3. 3) 米沢茂人,三井進午:日本土壌肥料学会誌,36, 135 (1965).
  4. 4) 津村昭人他:農業技術研究所報告.B, 36, 57 (1984).
  5. 5) H. J. Zehnder et al. : Radiat. Phys. Chem., 46, 61 (1995).
  6. 6) 坂内忠明他:RADIOISOTOPES, 43, 77 (1994).
  7. 7) 内田滋夫他:RADIOISOTOPES, 36, 575 (1987).
  8. 8) T. Ban-nai et al. : J. RADIAT. RES., 36, 143 (1995).
  9. 9) T. Ban-nai & Y. Muramatsu : J. of Environmental Radioactivity, 63, 251 (2002).
  10. 10) M. Schwaiger et al. : Applied Radiation and Isotopes, 61, 357 (2004).
  11. 11) M. R. Broadley & N. J. Willey : Environmental Pollution, 97, 11 (1997).
  12. 12) 大下誠一他:RADIOISOTOPES, in press.
  13. 13) 田川 隆:“IV. 馬鈴薯の生理”,作物体系第5編いも類,養賢堂,1963, pp. 29–30.
  14. 14) 農山漁村文化協会:“農業技術体系”,作物編5, 1975, pp. 132–133.
  15. 15) 茅野充男編:“物質の輸送と貯蔵”,朝倉書店,1991, 94–99.
  16. 16) 文部科学省科学技術・学術審議会・資源調査分科会報告書,五訂増補日本食品標準成分表,(2012/8/26アクセス). http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/toushin/05031802.htm


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