バイオサイエンススコープ

世界の希少酒について

Vol.50 No.12 Page. 917 - 920 (published date : 2012年12月1日)
寺本 祐司1
  1. 崇城大学生物生命学部応用微生物工学科

概要原稿

穀芽酒,吸酒管酒やハチミツ酒は,現在,日本ではあまりポピュラーでない世界の希少酒である.筆者は希少酒に興味をもち,調査と研究を行っている.まず,日本や中国の書物に記載のある稲芽酒の再現を行った.実験室で稲芽を造り,これを糖化剤として用い,稲芽酒を造ることができた.次に,インド東北部ナガランドでの調査により,現地でズトー (zutho) と呼ばれるライスビール,すなわち稲芽酒が現存することを初めて確認した.また,エジプトで伝統的手法を用いて造られる小麦ビール,ブーザ (boza) の調査と分析を行った.タンザニアのダルエスサラームでは,雑穀を用いて造るムベゲ (mbege) とコモン (common) という2種の穀芽酒を調査した.メソポタミアやエジプトの遺跡に残る古代のレリーフやシリンダー型の印には,吸酒管を用いて飲酒している様子が描かれている.ウガンダのカンパラでは,現在でも,この吸酒管を用いて飲む酒がある.現地では,吸酒管で飲むこの酒をアジョン (ajon) と呼んでいた.タイ国では竹の吸酒管で飲む壺酒,ウ (ou) が今でも造られている.日本ではハチミツ酒はあまり飲まれないが,世界の多くの地域では飲まれている.タッジ (tej) は,エチオピアの伝統的ハチミツ酒である.ターメリックなどで風味づけされる.オゴル (ogol) は,エチオピア南西部地域の森林に住む焼畑民の造るハチミツ酒である.オゴルの風味づけには現地に自生している木の樹皮が使用される.

リファレンス

  1. 1) T. H. Huang : “Science and Civilisation in China Volume 5, Biology and Biological Technology Part V : Fermentations and Food Science,” ed. by J. Needham, Cambridge University Press, Cambridge, 2000.
  2. 2) 花井四郎:“黄土に生まれた酒”,東方書店,1992.
  3. 3) Y. Teramoto, S. Yoshida & S. Ueda : Ferment, 13(2), 39 (2000).
  4. 4) Y. Teramoto : The Brewer and Distiller International, 3(7), 33 (2007).
  5. 5) Y. Teramoto & A. Wongwicharn : The Brewer International, 2(7), 31 (2002).
  6. 6) Y. Teramoto, M. Koguchi, A. Wongwicharn & N. Saigusa : African J. Biotechnology, 10, 10706 (2011).
  7. 7) Y. Teramoto : The Brewer International, 3(12), 29 (2003).
  8. 8) Y. Teramoto : Ferment, 13(4), 14 (2000).
  9. 9) Y. Teramoto & R. Sato : The Brewer International, 4(10), 39 (2004).


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