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代償性増殖と酸化ストレス
死細胞が周囲の生細胞の増殖を促進する

Vol.51 No.1 Page. 2 - 6 (published date : 2013年1月1日)
中野 裕康1
  1. 順天堂大学医学研究科

概要原稿

生体内で生じた死細胞は速やかに周囲に存在するマクロファージなどの食細胞により貪食され排除される.この過程は生体の恒常性維持にとって非常に重要であり,この過程が障害されると死細胞の残存を引き起こし,炎症の持続や自己免疫疾患などを引き起こす可能性がある(1).それでは,死細胞は単に貪食されるだけで,周囲の細胞や食細胞に対して何の生体応答も誘導しないのであろうか? これまでアポトーシス細胞を貪食した食細胞にはトレランスが誘導されることは知られていた.本総説では,死細胞がある状況においては積極的に何らかの因子を産生・放出し,生体の恒常性維持に関与しているという観点から,これまでの報告および最近のわれわれの結果をもとに概説したい.

リファレンス

  1. 1) S. Nagata et al. : Cell, 140, 619 (2010).
  2. 2) H. D. Ryoo et al. : Dev. Cell, 7, 491 (2004).
  3. 3) A. Bergmann et al. : Sci. Signal, 3, re8 (2010).
  4. 4) H. Kono et al. : Nat. Rev. Immunol., 8, 279 (2008).
  5. 5) F. Li et al. : Sci. Signal, 3, ra13 (2010).
  6. 6) T. Sakurai et al. : Cancer Cell, 14, 156 (2008).
  7. 7) V. J. Thannickal et al. : Am. J. Physiol. Lung Cell. Mol. Physiol., 279, L1005 (2000).
  8. 8) H. Nakano et al. : Cell Death Differ., 13, 730 (2006).
  9. 9) P. Niethammer et al. : Nature, 459, 996 (2009).
  10. 10) X. Du et al. : Blood, 89, 3897 (1997).
  11. 11) H. Nakano : Trends Immunol., 25, 402 (2004).
  12. 12) T. Nishina et al. : Sci. Signal, 5, ra5 (2012).
  13. 13) J. A. Hinson et al. : Handb. Exp. Pharmacol, 196, 369 (2010).
  14. 14) T. Putoczki et al. : J. Leukoc. Biol., 88, 1109 (2010).
  15. 15) H. Yu et al. : Nat. Rev. Cancer, 9, 798 (2009).


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