セミナー室 / 放射性降下物の農畜水産物等への影響

放射性セシウムのイネへの移行

Vol.51 No.1 Page. 43 - 45 (published date : 2013年1月1日)
根本 圭介1
  1. 東京大学大学院農学生命科学研究科

概要原稿

昨年3月の福島原発事故により,さまざまな放射性核種が多量に漏出して農耕地が広範に被曝した.こうした核種のうち,放射性セシウム (Cs) は漏出量が多いうえに 137Csは半減期も長いために注意が必要であるが,被災地の代表的な農耕地土壌である灰色低地土には幸いにしてセシウムを強く吸着する性質があったため,多くの場合,作物による放射性Csの経根吸収は昨年の暫定規制値 (500 Bq/kg) をはるかに下回った.しかし,一部の山間地域(二本松市小浜地区,福島市大波地区,伊達市小国地区など)では,500 Bq/kgに近い,あるいはこれを超える玄米が多数見いだされ,被災地の農業復興にとって大きな障害となっている.実際,これらの水田でのイネの放射性セシウム吸収を郡山の平坦地などと比較してみると,100倍あるいはそれ以上と桁違いに大きく,早急な原因解明が求められている.本稿では,この問題に焦点を当てて私たちが得てきた知見をまとめてみたい.

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