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スギヒラタケ急性脳症事件の化学的解明の試み
複数の物質がかかわる発症機構
Vol.51 No.3 Page. 134 - 137 (published date : 2013年3月1日)
概要原稿
スギヒラタケ (Pleurocybella porrigens) は,秋に,針葉樹,特にスギの古い切株や倒木に重なり合うように群生する.現時点では,人工栽培は成功していない.東北,北陸,中部地方を中心に広く食用とされていた.ところが,2004年秋に,このキノコの摂取により,急性脳症が発生した.この事件前までは食中毒に関する報告はなく,たいへん美味なキノコであり,筆者(河岸)も事件前までは毎年食べていた.患者数は59名に達し,腎機能障害をもっていた17名が亡くなった.この事件は戦後最悪の食中毒事件とされているが,原因の解明は困難を極め,厚生労働省研究班は「原因不明」と結論した.しかし,この研究班の班員であった筆者の一人(河岸)はその後も現在に至るまで研究を続け,もう一人の筆者(菅)と協力してその化学的解明を試みている.これまでの経緯を以下に記す.
リファレンス
- 1) 鈴木智大,藤田基寛,天野裕子,浅川倫宏,赤星早江子,脇本敏幸,小林夕香,森田達也,新井信隆,長井 薫,田中滋康,平井浩文,菅 敏幸,河岸洋和:“第52回天然有機化合物討論会講演要旨集”,2010, pp. 655–660.
- 2) T. Suzuki, Y. Amano, M. Fujita, Y. Kobayashi, H. Dohra, H. Hirai, T. Murata, T. Usui & H. Kawagishi : Biosci. Biotechnol. Biochem., 73, 702 (2009).
- 3) T. Kawaguchi, T. Suzuki, Y. Kobayashi, S. Kodani, H. Hirai, K. Nagai & H. Kawagishi : Tetrahedron, 66, 504 (2010).
- 4) T. Kan & T. Fukuyama : Chem. Commun., 353 (2004).
- 5) T. Fukuyama, M. Cheung, C.-K. Jow, Y. Hidai & T. Kan : Tetrahedron Lett., 38, 5831 (1997).
- 6) T. Wakimoto, T. Asakawa, S. Akahoshi, T. Suzuki, K. Nagai, H. Kawagishi & T. Kan : Angew. Chem., Int. Ed. Engl., 50, 1168 (2011).
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