セミナー室 / 海洋生物資源への期待:マリンバイオテクノロジーの現場から
3. 先端養殖
マグロ完全養殖
Vol.51 No.4 Page. 257 - 262 (published date : 2013年4月1日)
概要原稿
完全養殖とは,卵から親魚となって産卵するまでのライフサイクルのすべてを人為管理下において養殖するというものであり,現在では多くの魚種が完全養殖技術により養殖されている.天然稚魚あるいは幼魚を獲ってきて養殖するクロマグロでは天然資源の減少や不安定供給が問題となっている.産卵コントロール技術が進んでいる完全養殖では必要な時期に必要な数の養殖用種苗を人為的に生産できるうえ,世代を超えて養殖するため品種改良が可能となり,たとえばマダイでは成長の速い養殖用品種が用いられている.このように天然資源の保護と生産効率の高い養殖を行うには完全養殖は不可欠である.ここでは,飼育すら不可能と考えられていたクロマグロの完全養殖達成までの道のりとその産業化についての近畿大学水産研究所の取り組みを紹介する.
リファレンス
- 1) O. Murata, T. Harada, S. Miyashita, K. Izumi, S. Maeda, K. Kato & H. Kumai :Fisheries Science,62, 845 (1996).
- 2) 澤田好史:“水産増養殖システム1 海水魚”,熊井英水編,恒星社厚生閣,2005, p. 173.
- 3) 熊井英水:“近畿大学プロジェクト クロマグロ完全養殖”,熊井英水,宮下 盛,小野征一郎共編著,成山堂書店,2010, p. 1.
- 4) 宮下 盛,中川至純:“近畿大学プロジェクト クロマグロ完全養殖”,熊井英水,宮下 盛,小野征一郎共編著,成山堂書店,2010, p. 22.
- 5) 宮下 盛,村田 修,澤田好史,岡田貴彦,熊井英水:バイオインダストリー,21, 7 (2004).
- 6) Y. Sawada, K. Kato, T. Okada, M. Kurata, Y. Mukai, S. Miyashita, O. Murata & H. Kumai :Ichthyological Research,46, 245 (1999).
- 7) K. Yamaoka, T. Nanbua, M. Miyagawa, T. Isshiki & A. Kusaka :Aquaculture,189, 165 (2000).
- 8) T. Kaji, M. Kodama, H. Arai, M. Tanaka & M. Tagawa :Aquaculture,224, 313 (2003).
- 9) T. Takashi, H. Kohno, W. Sakamoto, S. Miyashita, O. Murata & Y. Sawada :Aquaculture Res.,37, 1172 (2006).
- 10) Y. Nakagawa, M. Kurata, Y. Sawada, W. Sakamoto & S. Miyashita :Aquatic Living Resources,24, 403 (2011).
- 11) 石橋泰典:“近畿大学プロジェクト クロマグロ完全養殖”,熊井英水,宮下 盛,小野征一郎共編著,成山堂書店,2010, p. 37.
- 12) S. Miyashita, K. Kato, Y. Sawada, O. Murata, Y. Ishitani, K. Shimizu, S. Yamamoto & H. Kumai :Suisanzoshoku,46, 111 (1998).
- 13) 宮下 盛:近畿大学水産研究所報告,8, 1 (2002).
- 14) 石橋泰典,宮下 盛,澤田好史,岡田貴彦,倉田道雄:公開特許公報 (A), 特許第4081092号,近畿大学 (2005).
- 15) Y. Sawada, T. Okada, S. Miyashita, O. Murata & H. Kumai :Aquaculture Res.,36, 413 (2005).
- 16) 安藤正史:“近畿大学プロジェクト クロマグロ完全養殖”,熊井英水,宮下 盛,小野征一郎共編者,成山堂書店,2010, pp. 97–111.
- 17) FDA, What you need to know about mercury in fish and shellfish. www.fda.gov/oc/opacom/hottopics/mercury/backgrounder.htmla, 2004.
- 18) M. Ando, M. Seoka, M. Nakatani, T. Tsujisawa, Y. Katayama, M. Nakao, Y. Tsukamasa & K. Kawasaki :J. Food Prod.,71, 595 (2008).
- 19) M. Nakao, M. Seoka, M. Nakatani, T. Okada, S. Miyashita, Y. Tsukamasa, K. Kawasaki & M. Ando :Aquaculture,288, 226 (2009).
- 20) K. Morishima, H. Yamamoto, Y. Sawada, S. Miyashita & K. Kato :Ecology Res.,9, 790 (2009).
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