セミナー室 / 澱粉生合成研究の新潮流
2. 米の澱粉粒のライブ観察
Vol.51 No.7 Page. 478 - 482 (published date : 2013年7月1日)
概要原稿
日常生活で身近な物質の澱粉については,このセミナー室の連載でも明らかなように,生合成と分解,物性,産業利用など幅広い分野で活発な研究活動の歴史がある.今後も新たな発見や産業利用における発明は続くと予想される.ところが意外なことに,澱粉生合成の場である細胞内小器官(オルガネラ)のアミロプラストはこれまであまり研究対象になっていない.そのため,アミロプラストの構造や分裂・発達の様式は不明な点が多い.この理由として,アミロプラストは単離・精製することが難しい,葉緑素を含まないため蛍光顕微鏡での観察が難しい,また葉緑体と同じ類のプラスチドとして認識されていたことなどが挙げられる.一方,観察が難しいとされていたオルガネラについて,共焦点レーザー顕微鏡と蛍光タンパク質の開発により詳細な観察が容易になった.イネは組換え体を作りやすいため,胚乳細胞のアミロプラストも蛍光タンパク質を利用してライブ観察(生きた細胞の観察)が可能になった.その結果,アミロプラストの分裂様式や内部構造の詳細が明らかになっただけでなく,澱粉粒合成の仕組みについても全く予期していなかった研究成果が得られつつある.このセミナー室では,アミロプラストのライブ観察から見えてきた複粒型の澱粉形成の仕組みを紹介する.
リファレンス
- 1) R. Matsushima, J. Yamashita, S. Kariyama, T. Enomoto & W. Sakamoto :J. Appl. Glycosci.,60, 37 (2013).
- 2) A. M. Myers, M. G. James, Q. H. Lin, G. Yi, P. S. Stinard, T. A. Hennen-Bierwagen & P. W. Becraft :Plant Cell,23, 2331 (2011).
- 3) Y. Kawagoe :J. Appl. Glycosci.,60, 29 (2013).
- 4) K. Cline & C. Dabney-Smith :Curr. Opin. Plant Biol.,11, 585 (2008).
- 5) A. Kitajima, S. Asatsuma, H. Okada, Y. Hamada, K. Kaneko, Y. Nanjo, Y. Kawagoe, K. Toyooka, K. Matsuoka, M. Takeuchiet al.:Plant Cell,21, 2844 (2009).
- 6) T. Taira, N. Fujita, K. Takaoka, M. Uematsu, A. Wadano, S. Kozaki & S. Okabe :Biochem. Genet.,33, 269 (1995).
- 7) Y. Kawagoe, A. Kubo, H. Satoh, F. Takaiwa & Y. Nakamura :Plant J.,42, 164 (2005).
- 8) S. Miyagishima :Plant Physiol.,155, 1533 (2011).
- 9) M. S. Yun & Y. Kawagoe :Plant Cell Physiol.,50, 1617 (2009).
- 10) M. S. Yun & Y. Kawagoe :Plant Cell Physiol.,51, 1469 (2010).
- 11) 藤田直子:化学と生物,51, 400 (2013).
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