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(published date : 2013年2月1日)
Pseudomonas fluorescensは環境中に広く生息するグラム陰性細菌であり,そのうちのいくつかは植物の根圏において病原微生物と拮抗することにより植物を保護するバイオコントロール細菌としての特徴を有する.P. fluorescensが病害防除に役立つ原因の一つに,本細菌がその二次代謝産物として抗菌性物質などのバイオコントロール因子(フロログルシノール,ピオルテオリン,AprAプロテアーゼなど)を菌体外に産生することが挙げられ,これにより病原微生物は駆逐される(1).バイオコントロール因子をコードするmRNAは通常,リプレッサー (RsmA, RsmE) によって負に制御されている.しかし増殖に伴いGacS/GacAと呼ばれる二成分制御系が活性化されると,同調して small RNA (RsmX, RsmY, RsmZ) の量が増え,これらにより上述のリプレッサーはトラップされ,結果としてフリーになったmRNAの翻訳が進みバイオコントロール因子の産生量が高まる(図1).こうした仕組みが現在までに明らかにされてきたが,このGac/Rsmシグナル伝達系 (Gac:Global activator, Rsm:Regulator of secondary metabolism) と呼ばれる一連のカスケードは細菌のライフサイクルのなかで常に発動しているわけではなく,どのような「きっかけ」で発動するようになるのかについては不明な点が多い.そこで筆者は,発動のきっかけとなる因子を探索し,それらを制御しつつ「バイオコントロール細菌をコントロール」することができれば,本細菌による植物保護効果をより高められるのではないか,という視点のもと研究を進めている(2).