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(published date : 2012年1月1日)
細胞膜は小さな疎水性分子を除き,ほぼすべての物質に対し透過障壁として作用するため,基質の膜を介する選択的な輸送は細胞の生理機能と恒常性を保つ上で重要である.この輸送は,細胞内への物質(栄養物)の取り込み輸送と,代謝産物(老廃物など)の排出輸送の二方向性があり,その重要性と研究の容易さから,各種基質の取り込み輸送に関する膨大な研究がこれまでなされ,アミノ酸や糖などの栄養物質の取り込み輸送体が数多く同定されてきた(1).一方,排出輸送体に関しては,1980年代以降抗生物質や重金属などの細胞毒性物質を細胞外へ排出する輸送体の実体(タンパク質・遺伝子)が捉えられるようになり(2, 3),1990年代以降はアミノ酸や糖,さらにはヌクレオシドなどの一次代謝産物を排出する輸送体が遺伝子レベルで同定されてきた(4~6).これらの輸送体に関する研究は,基礎生物学の研究対象として重要であるばかりではなく,微生物を利用した物質生産を行なっている産業分野においても非常に重要な研究領域である.