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(published date : 2014年9月1日 advanced publication : 2014年8月20日)
1,000種類で100兆個―これはわれわれヒトの腸管内に生息している共生細菌の種類と数である.われわれが生活している環境中には無数の微生物が存在しているが,それらは水中や土壌といった外環境だけでなく,実はわれわれの体表の至る所に住みついている.そのなかでも腸管は体の「内なる外」とも呼ばれ,体内でありながら外環境にさらされている器官であり多くの細菌が住みついている.特に大腸は,地球上のあらゆる環境の中でも特に細菌の増殖に適した環境であり,糞便1 gあたりおよそ1,000億個というほかの環境と比べてはるかに高密度に細菌が存在している.大腸内に生息している腸内細菌の総数は100兆個にもなるが,ヒトの体を構成する体細胞の数はおよそ37兆個と言われており,その総遺伝子数もヒト遺伝子のおよそ25倍以上にのぼるとされる.したがって,複雑な腸内細菌の集団(腸内細菌叢)はしばしば一つの臓器に例えられ,真核生物自身の組織・臓器と原核生物である腸内細菌叢とが複雑に相互作用することで,協調的な「腸内生態系(腸内エコシステム)」を形成していると考えられる.これらを踏まえ米国のLederbergは,われわれのからだは真核細胞と原核細胞からなる「超生命体」であると提唱した.