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(published date : 2014年4月1日)
オリゴ糖や多糖には構成単糖・結合様式・重合度の違いなどにより極めて多種類のものが存在する.これらの糖質を効率良く利用するために,生物は基質特異性の異なる多様な糖質加水分解酵素を備えている.糖質加水分解酵素はアミノ酸配列の類似性に基づいて130を超えるファミリーに分類できる(1).このことは糖質加水分解酵素には少なくとも130種の祖先タンパク質が存在することを示し,さらにファミリー内でも基質特異性が多様化していることを考えると,いかに糖質加水分解酵素が多様に分子進化してきたかをうかがい知ることができる.ファミリー内での分子進化では少数のアミノ酸変異や局所的な構造変化によって基質特異性が多様化してきたと考えることができる.本稿ではその一例として,植物や哺乳動物を含む多くの生物に分布する糖質加水分解酵素ファミリー31 (GH31) α-グルコシダーゼの基質特異性と構造の多様性について紹介する.