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注目記事

ポリフェノールサイエンスへの挑戦と創造  /  辻󠄀村 英雄
MAPKシグナル経路のレドックス制御がイネの低温耐性を高める  /  今井 亮三, 謝 国生
ROSを介した低温シグナルの伝え方
細胞外核酸を利用した簡便で迅速な形質転換系の確立  /  金子 真也, 板谷 光泰
石油資源に依存しない化成品原料となるリシノール酸の分裂酵母による分泌生産系の開発  /  植村 浩

化学と生物 Vol.54 (2016) No.9

全文PDF :
英文要旨および目次PDF :

巻頭言

研究を楽しみ社会に貢献しよう!  /  今中 忠行

Page. 613 - 613 (published date : 2016年8月20日)
冒頭文
リファレンス
京都大学大学院工学研究科在職中は,毎年複数の博士後期課程最終年の院生がいた.彼らに博士号を授与するためにはそれぞれ複数の学術論文が受理される必要があったため,年末が近くなると投稿中の論文の最終結果が気になり,いつもプレッシャーを感じていた.論文を通す(受理される)ためには,それまでに研究室で蓄積してきた技術やアイデアを基盤として新しいデータを追加し,議論をするのが常であった.このほうが確実に論文受理につながるからである.

今日の話題

なぜ冷夏でイネが「いもち病」にかかりやすくなるのか  /  高辻󠄀 博志

Page. 614 - 616 (published date : 2016年8月20日)
概要原稿
リファレンス
イネは冷夏の年にいもち病にかかりやすくなる.これは,イネのサリチル酸経路が低温によって抑制されるためである.われわれはその分子機構を解明し,冷夏によるいもち病被害の拡大を防ぐ技術の開発に道筋をつけた.
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MAPKシグナル経路のレドックス制御がイネの低温耐性を高める  /  今井 亮三, 謝 国生

Page. 617 - 619 (published date : 2016年8月20日)
概要原稿
リファレンス
イネの低温シグナルを伝達するMAPK経路(OsMKK6?OsMPK3)の活性化により低温耐性が獲得される.本経路は低温下で蓄積するROSによって活性化されるが,それにはMAPKのCys残基のレドックス制御が関与する.
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プロアントシアニジンオリゴマーの生物活性  /  真壁 秀文, 河原 誠一, 藤井 博

Page. 620 - 622 (published date : 2016年8月20日)
概要原稿
リファレンス
プロアントシアニジン類は,ブドウの果皮や種皮,小豆や黒豆の皮,カカオなどに含まれさまざまな生物活性を有する.本稿ではプロアントシアニジンのオリゴマーに関してわれわれの研究を含めた最新の動向を紹介する.
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土の中の銀河  /  横山 和成

Page. 623 - 625 (published date : 2016年8月20日)
概要原稿
リファレンス
巨大複雑系である土壌微生物群集の評価には,古典科学の「要素還元主義」に基づく分析的手法が適用できない.そのため,新しく包括的評価手法「土壌微生物多様性・活性値」を開発・実用化し,万博史上初の「食の万博」ミラノ万博2015で展示したところ,絶賛を受けた.
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解説

石油資源に依存しない化成品原料となるリシノール酸の分裂酵母による分泌生産系の開発  /  植村 浩

Page. 626 - 632 (published date : 2016年8月20日)
概要原稿
リファレンス
リシノール酸にはさまざまな工業的用途があり,特にウレタンなどの化成品原料として注目されている.筆者らはこのリシノール酸の分裂酵母での生産を試みた.リシノール酸は水酸基を含む特殊な脂肪酸であるため酵母の増殖を阻害したが,その増殖阻害を抑圧する遺伝子としてホスホリパーゼA2活性をもつplg7が見いだされた.Plg7pはリン脂質上で合成されるリシノール酸をリン脂質から切り出して細胞膜の機能を回復して増殖を戻すと考えられたが,同時に切り出された遊離リシノール酸は細胞外へ分泌された.本来脂肪酸や脂質を分泌できない分裂酵母でリパーゼの活用により遊離リシノール酸を細胞外へ分泌生産できる可能性が示された.
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歯周病と全身疾患の関連  /  山崎 和久

Page. 633 - 639 (published date : 2016年8月20日)
概要原稿
リファレンス
歯周病は心筋梗塞や狭心症などの原因となる動脈硬化症,糖尿病,関節リウマチなど,実にさまざまな疾患のリスクを高めることが報告されている.これまでその関連メカニズムに関して,プラーク中の歯周病原性細菌が炎症により損傷した歯周ポケット上皮より組織内に侵入し,全身循環を介して遠隔組織に影響すること,歯周炎組織で産生されたさまざまな炎症性サイトカインが全身循環を経由して血管,脂肪組織,肝臓などに持続的かつ軽微な炎症を起こすと考えられてきた.しかしながら,歯周病が全身疾患の発症・進行に関与するメカニズムについてはいずれの説も決定的ではなく,依然として不明な点が多い.われわれは歯周病原細菌であるPorphyromonas gingivalisを口腔から投与するモデルを用いて,肥満モデルや糖尿病モデルマウスで見られるのと同様,腸内細菌叢が変動し,血中内毒素レベルが上昇することを明らかにした.腸内細菌叢の変化は動脈硬化症,糖尿病,関節リウマチ,非アルコール性脂肪肝疾患,肥満など歯周病とも関連する疾患のリスクファクターであることが知られている.大量に飲み込まれた歯周病原細菌が腸内細菌叢を変動させるというマウスにおける実験結果は,従来の仮説では十分に説明することができなかった歯周病と全身疾患の関連の因果関係を説明するのに合理的な生物学的分子基盤を提供する.
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2-オキソグルタル酸依存性ジオキシゲナーゼの多様性と進化  /  河合 洋介, 小埜 栄一郎, 水谷 正治

Page. 640 - 649 (published date : 2016年8月20日)
概要原稿
リファレンス
2-オキソグルタル酸依存性ジオキシゲナーゼ(2OGD)は二価鉄を含む水溶性のジオキシゲナーゼであり,低分子化合物からタンパク質やDNAまで様々な生体分子に対して水酸化や脱メチル化など多彩な酸化反応を触媒する.2OGDは細菌から植物,動物まで広く存在しており,ヒトには約60個,各植物種のゲノムには0.5%を占める2OGD遺伝子が存在しているが,進化系統解析に基づく分類命名法は確立されていない.本解説では,生物界全体の2OGDを比較解析し,2OGDの進化と多様性,および代謝活性の有用性について考察する.
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ケトジェニックダイエットがヒトの健康に及ぼす影響について  /  山本 祐司

Page. 650 - 656 (published date : 2016年8月20日)
概要原稿
リファレンス
糖尿病患者数は増加の一途をたどっており,Ketogenic diet(KD)はその独自性や特殊性から薬剤治療と異なる治療食としての効果が期待されている.また,癲癇やがんへの効果も報告されつつあるが,KDの生体にどのように作用し,影響を与えるかについての生化学的・分子生物学的な報告が少ないことと相まって,KDの使用には疑問が残らざるをえないのが現状といえる.また,KDが生体に及ぼす影響についても多くが事象論にとどまっているが現状である.本稿では,KDの作用メカニズムとして近年の報告を紹介し,その有効性をエビデンスに基づいて示したい.
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真正細菌フィルミクテス門に属する枯草菌の代謝制御の分子生物学の過去半世紀の展開  /  藤田 泰太郎

Page. 657 - 667 (published date : 2016年8月20日)
概要原稿
リファレンス
真正細菌フィルミクテス門の枯草菌とプロテオバクテリア門の大腸菌の代謝経路を比較すると,解糖系,糖新生,TCAサイクル,ペントースリン酸回路,アミノ酸・塩基合成などの主要な代謝経路の酵素タンパク質は,糖新生にかかわる酵素タンパク質にオルソログの欠落が見られるが,ほぼ保存されている.しかしながら,枯草菌と大腸菌の分子レベルでの代謝制御機作となると両者の間でほとんど保存されていない.筆者は過去半世紀近く,主に枯草菌のカタボライト制御と緊縮転写制御の分子レベルでの解明に取り組んできた.この長年にわたる研究成果をゲノムの塩基配列決定の迅速化とオミックス解析を含む遺伝子発現解析技法の進展とを絡めて解説する.
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セミナー室

細胞外核酸を利用した簡便で迅速な形質転換系の確立  /  金子 真也, 板谷 光泰

Page. 668 - 673 (published date : 2016年8月20日)
概要原稿
リファレンス
菌体外に放出された細胞外核酸を介して行なわれる「自然形質転換」は,供与菌の生死を問わずDNAの安定性に依存して幅広い水平伝播が可能である.この原理を応用してドナーとなる宿主細胞を溶菌させ,溶菌液を直接用いた簡便で迅速な形質転換法として「溶菌法」を開発した.
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カテキンシグナリングならびにイメージングの基礎  /  藤村 由紀, 立花 宏文

Page. 674 - 680 (published date : 2016年8月20日)
概要原稿
リファレンス
生体は食品因子の感知機能を備えることでその生体調節作用を制御しているとのコンセプトの下,その感知システムの解明を試みている.ここでは,機能性食品因子の一つである緑茶カテキンの生体感知機構とその挙動を可視化する技術の最新の知見を紹介する.
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混み合うと黒くなるトビバッタ  /  管原 亮平, 田中 誠二, 塩月 孝博

Page. 681 - 686 (published date : 2016年8月20日)
概要原稿
リファレンス
トノサマバッタおよびサバクトビバッタの体色は生育密度,生育環境の背景色,温度,生育ステージによって大きく変化する.本稿では,その概要と黒化を誘導するホルモン,コラゾニンについて解説する.
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バイオサイエンススコープ

育種革命をもたらすゲノム編集技術  /  鈴木 富男

Page. 687 - 690 (published date : 2016年8月20日)
概要原稿
リファレンス
内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム」において,国産ゲノム編集技術の開発や画期的な新品種の育成に着手しており,今後,「知」の集積と活用の場によりこれら研究成果を速やかに民間企業などに橋渡しし,イノベーション創出を目指す考え.
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プロダクトイノベーション

ポリフェノールサイエンスへの挑戦と創造  /  辻󠄀村 英雄

Page. 691 - 695 (published date : 2016年8月20日)
概要原稿
リファレンス
“やってみなはれ”精神の下,来たるべき21世紀の“心”と“健康”の時代に向けた新規事業創出の研究開発からスタートしたサントリーグループのポリフェノールサイエンスへの挑戦と創造の歴史について紹介する.
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付録

和文誌編集委員  / 

Page. 0 - 0 (published date : 2016年8月20日)
概要原稿
リファレンス